枯れ落ち葉の紅の色 拾肆
日が暮れた。
客が来はじめて、男と女が笑い合う声がリンの部屋に届く。
あのバカは、もう来たんだろうか。
誰もいない部屋で床にふせたままぼんやり考えていた。
驚くでしょうね。
私が今日座敷に来ない、って聞いたら。
代わりの子なんかで黙るやつじゃないし。
きっと、具合が悪い、なんて言ったらあのばかのことだもの。
見舞おうとするに決まってる。
誰かが上手く説明してくれるといいんだけど。
目頭が熱くなっていく。
ただでさえ殴られた頬が痛むのに、頭が痛い。
このまま、あのばかに会えないまま私はあの侍だけの花魁になるんだろうか。
ただ傷を増やされ続けて、他の客の相手もできずに、あの侍にもらわれて。
嫌よ。
頬にあてている冷えた手拭いが、涙を吸って温くなっていく。
嫌よそんなの。
あんな侍に買われるくらいなら、その前に死んだほうがよっぽどまし。
ばかでも、あいつは問屋の息子なんだから、毒薬の一つや二つ、手に入れられる。
ああ、でもあのバカのことだから、あたしが死のうとしてること知ったら、止めてくるんでしょうね。
それとも、一緒に死んでくれるかしら。
まじめにそう考えて、直後に笑った。
なに。
あいつと一緒に死にたいの? 私。
いつの間に、私、こんなに。
客に惚れるなんて、心が弱いからだ、なんて思ってたのに。
涙を拭う気力もなく、天を見上げる。
こんなに惚れてるなんて、私馬鹿みたい。
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