右と左の浮気事情 Ⅷ
レンが怒ってた。
すごくすごく、怒った顔してた。
どうしよう。
どうしようっ
「どうした。また具合悪いのか」
顔をあげると、アカイトがいた。
「会うたび泣き顔だな、お前」
角張った手があたしの涙を拭う。
「だって、レンが、怒って」
「勝手に怒らせとけ! お前こそ浮気されたんだから、怒ってなきゃだめなんだよ」
抱き上げられ、あたしは部屋の端にあるソファーに運ばれた。
アカイトの膝の上に下ろされ、抱きしめられる。
「ちょっと睨まれたぐらいでマジ泣きしてんじゃねえよ」
アカイトの体は大きくて、あたしの小さな体はすっぽり包まれてしまった。
性別の違いと年の差を感じながら広い胸に頭を預けていたところで、
「リン」
呼ばれて、顔をあげると唇を奪われた。
舌をねじこまれる。
歯茎をなぞるその舌にぞくりとした。
舌をからめとられ、体が震える。
息をする暇もないくらい舌をなめられ、
気づいた時には、体がソファーに横たわっていた。
酸素不足で回らなかった頭も、
「っ!」
胸に触られたらいやでもはっきりするもので。
「なにす」
文句を言おうとしたら、また唇を塞がれた。
「野暮なこと聞くの好きだなお前」
うなじに舌をはわせながらアカイトが言う。
「そんなに口に出してほしいか?」
息をするのが精一杯であたしはなにも言えず、伸びてきた手にも気づかなかった。
するりとヘッドホンが外される。
はっとして逃げようとした時にはもう遅く、
「やぁっ」
耳に感じた生暖かい感触に、体が大きくはねる。
「お前耳弱いんだ」
アカイトの楽しそうな声を聞きながら逃げようとしても、体格も力も全然違うアカイトから逃げれるわけがなく。
「ひやぁ……はう」
がっちり拘束されたうえで、舌をはわされる。
休む間なくくる感触に、体の力が抜けていく。
レンにはいつも、耳をひと舐めされるだけだった。
こんななぶるような舐め方、されたことなかった。
解放されたのは時間も忘れた頃。
力が入らず手足を投げ出したあたしの耳元で、アカイトは言った。
「そのまま大人しくしてろ。気持ち良くしてやっから」
首すじに、鎖骨に、胸元に、レンとは違う舌を感じる。
レンとは違う大きな手が、あたしの体を撫でる。
「リン」
レンじゃない声があたしの名前を呼ぶ。
「……やだ」
「は?」
「やっぱりやだぁ」
涙が溢れた。
止めることも出来ずぼろぼろと落ちる。
「やだ、やなの」
「……やだって泣かれてもなあ」
大きくため息をつかれて、目尻を舐められた。
さっきまでなんでもなかったその舌に、急に恐怖と嫌悪を感じてあたしはアカイトの顔をつかんで遠ざける。
「今さら言われてもねぇ……俺もうスイッチ入っちゃってるし」
べろっと指先を舐められ、あたしは手をひっこめた。
「大人しくしてろ。痛くはしねえから」
アカイトの手があたしの服をたくしあげた。
腹部に舌をはわされる。
「やだ、やだぁっ」
力をこめてアカイトの頭を離そうとしても、必死に足をばたつかせても、アカイトはびくともしない。
アカイトはあたしの手をどうこうしようとはしなかった。
その代わり、あたしの服がどんどん脱がされていく。
レンじゃない手がスカーフをとって、
レンじゃない指があたしの服を脱がして、
レンじゃない、
レンじゃない、
レンじゃなきゃ、
「レンじゃなきゃやだぁ」
あたしの泣きながらの抵抗は意味がなく、
「レン、レン……」
アカイトの舌は下に下に下がっていった。
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はくしゅ
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