「レン!」
すぱぁん! と早朝の空気の真ん中をふすまを開け放つ音が走った。
部屋の入り口に立つリンを布団の中から一瞥するとレンは再び布団をかぶり直した。
そんなレンにリンが飛びつく。
「起きて! 今日は客が来るんだから!」
リンがゆっさゆさとレンを揺らすが、レンが布団の中から出る気配はない。
「ちょっとレン! 起きなさいってば!」
リンの手に叩かれて、レンはやっと目を開けて抗議する。
「もう少し寝ててもいいだろが」
「だめ。若にはちゃんと風呂入ってもらってびしっと決めてもらわなきゃいけないんだから」
ほら起きる! とせかすリンに、レンは布団の中で体を回して背を向けた。
「レン!」
「めんどくせぇ」
「めんどくせぇ、じゃない! 若!」
わ~か~! とリンが叫ぶが、レンは布団をかぶってしまってもう動かない。
そんなレンにリンは大きなため息をつく。
布団の端をしっかり掴み、一呼吸置いてから一気に引きはがす。
いつもはこんなことされてもすぐに布団を取り戻されて、意味のがないのだが、今日は特別だ。
布団を追ってのびてきたレンの腕の中に入りこみ、寝ているその口を塞いでやった。
「……はい、いいかげん起きてください」
驚きから溶け始めたところでその腕を抜け出し、床に広がった布団をたたんでさっさと押し入れに運ぶ。
「リン」
見れば布団の上に寝たまま、レンは意味ありげな視線を向けてきていて。
ああもうかっこいいな、なんて思いながらリンはつんと背を向けた。
「だめです。続きは夜です」
ため息をついてうなりながら体を起こし始めたレンにお風呂わいてるから入ってね、と行ってリンはその部屋を後にした。
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