雨に濡れた君を
進む時計と強くなってくる雨に不安になりながら、あたしは走った。
公園の中、周りに木もなにもないベンチに、レンは座っていた。
「レンっ!」
近寄れば、うつろな目でレンはあたしを見た。
「……どうしたの?」
「どうしたのじゃないよっ!」
あわててレンの頭上に傘をさす。
「早く帰ろう? このままじゃ風邪引いちゃうよ!」
すごく寒いはずだ。
だって、傘を差して走ってきたあたしだって、すごく寒いのに。
ずっと雨に打たれていたであろうレンは、もっと寒いはずだ。
「ほら、レン!」
そう言ってとった手が、すごくすごく冷たくて。
固まったあたしの手を、レンが引っぱった。
傘が落ちる。
「リンの体、暖かいね」
腰に冷たい腕を回された。
「リン……」
あたしを抱く腕に、いつもみたいな力はなくて。
胸の上にある頭を両手でそっと抱えた。
「レン、帰ろ?」
びしょ濡れの髪を撫でる。
レンは動かない。
「帰って、一緒にお風呂入ろうよ。
で、おいしいもの食べて、一緒に寝よ?」
雨に濡れた弟を、力いっぱい抱きしめる。
「あたし、ずっとレンの傍にいるから」
ぽちっとおしていただけたら光栄です。
誤字とかも発見したら遠慮なく言ってやってください。
はくしゅ
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