朝までずっと
暗い部屋に扉が開く音が響いた。
続いて聞こえてきた、ぺた、ぺた、いう音。
飛び起きようかと思ったが、感じる気配に覚えがあった。
規則正しく呼吸をして寝ているふりをしていれば、背中側の布団が沈んだ。
「……レン」
小さく、か細く聞こえてきた声。
「リン?」
寝ていると思っていたのに、突然起きあがったレンにリンは息をのんで固まる。
そして。
突然ベッドから消えたリンの重さに、反射で手を伸ばした。
奇跡的につかめた細い腕を全力で引き寄せる。
抵抗をうけながらも腕の中にリンを閉じ込めた。
がっちり拘束したうえでレンが聞く。
「なんで逃げるの」
答えはない。
「ねえ。答えてよリン」
再度の質問にリンは、
「……起こしちゃって、ごめんなさい」
かすれ気味の声でそう答えた。
「ちょうど寝付けなかったとこだしそれはいいよ。
じゃなくて。
オレが聞いてるのは、逃げた理由なんだけど。あと」
レンが自分の頬でリンの頬に触れる。
濡れた感触に、やっぱり、とレンがため息をつく。
「泣いてた、よね。それもなんでか聞きたいんだけど」
答えて、と聞いても、リンは何も言わないまま、もう動こうともしない。
まあいいや、とレンがリンを組み敷いた。
「完全に目覚めちゃったし、せっかくだから朝まで付き合ってよ」
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