「やっぱりここにいたっ」
鋭い声と共に視界に飛び込んできたシアン色に、彼は舌打ちをした。
青空に向かって白い煙を吐き出し、まだ長い煙草を床に捨てた。
火を踏み消したところで、腰に手をあてた彼女が彼の前に立った。
「煙草止めなさいっていつも言ってるのに!」
うるさい、と彼は見るからに嫌そうな顔をする。
「オレの喉はお前と違って歌を歌うためのものじゃない。何度言わせる」
「喉だけじゃなくて体全部に煙草は悪影響なの!」
「ほっとけよ。他人のことなんて」
「他人じゃない! だってミクオは」
「他人だよ」
彼の冷たい目に彼女はその先の言葉を奪われた。
無言の二人の間を、風が通り抜ける。
「で、なんの用だよ」
「……メイちゃんが、ちょっと手貸してほしいって」
彼から目をそらしつつ彼女が言うと、またかよ、と彼をしかめた。
「人を使いすぎなんだよあの旧型女は」
言い捨てながら彼は彼女に背を向けて行ってしまった。
「……毎回手伝いに行くくせに」
離れていく背中を見つめ、彼女はつぶやく。
そしてふと足下につぶれた吸い殻を見つけ、つまみあげる。
「関係なくなんか、ないわよ」
あなたは私なんだから。
えっと、
「ミクオは煙草を吸うけど、ミクが近づいてきたら火をつけた直後でも消して、ミクに副流煙がいかないようにしてくれてる、ミクオからミクへのわかりにくい愛なんだよ」ってことを書きたかったんだけど無理でした。 はくしゅ
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