愛してるの誕生日 2
「リン、お前、最近ちょっとわがまますぎ」
その言葉に、どきっとした。
だって、
自覚が、あったから。
出かける準備を整えていれば、きょとんとしてリンが聞いてきた。
「レン、どこ行くの?」
「仕事」
「なんで? 今日はなんにも……」
ああ、昨日は結局一日中ゲームで、言ってなかったか。
「オレだけのがあるの」
「レン、だけの……ソロ、なんだ」
「違うよ。ネルと一緒」
リン以外の人、しかも亜種と一緒の仕事ということに、多少の不安はあるけど、緊張するほどじゃあない。
まあ、なんとかなるだろう、とレンは出かける準備を整えた。
「それじゃ」
ドアノブを掴み、行ってきます、と
言うのと同時に、背中の服を捕まれた。
そのまま後ろに引っ張られる。
予想していなかった出来事だったため、レンは派手に転び、腰を強かに打ち付けた。
「痛ってぇ……」
犯人は一人しかいない。
「リン、なにすんの」
レンが転んでいる間に扉の前、つまりレンの前移動したリンは、扉に背中を貼りつけて塞いでいる。
「……やだ」
なにが、とこっちが聞く前に、リンの目から涙が流れた。
「嫌! 行っちゃやなの!」
涙腺が破裂したんじゃないかと思うくらい、唐突に、盛大にリンが泣く。
「やだ、やだ、行っちゃやだ」
床にぼろぼろと涙が落ちる。
いつもと違う泣き方に、どうしようか迷ったが、レンは転がっていた仕事鞄をつかんで立ち上がった。
「……やだって言われても、仕事だし」
「仕事でも嫌ぁっ」
リンが叫ぶ。
「ネルとなんでしょうっ!? ネルとだけは絶対嫌なのっ!」
リンの言うことがいつものわがままっぽくなってきて、ため息が出た。
この間から、リンはやけにネルに対してつっかかる。
ミク姉とかメイ姉がどんなに近くにいても、気にしないくせに。
「また、わがまま」
「だって! だってリンがっ」
そこで、リンの言葉が止まった。
オレの顔を見たまま、黙りこむ。
続きが出てきたのは、数秒後。
「リンが一番……レンのこと好きなのに、大好きなのに」
先ほどとはうってかわって静かに泣くリンに、
オレは棒立ちのまま、何もできない。
「ネルはリンのレンをとろうとするんだもん」
だからネルなんて大嫌い、とリンは泣いた。
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