行きたくないと、この腕が
「ミク」
小さな声で呼びかければ、君はこっちを見てくれる。
手を伸ばせば、あなたはこの手とって抱きしめてくれる。
「クオ」
「あれ、ミクは?」
「え、知らないよ?」
「え~、どこ行ったかな~?」
そんな会話が聞こえた。
「クオ」
重ねていた唇を逃げるように離すと、目の前にある顔がすごく不機嫌なものになった。
「まだしたいよ、ミク」
「でも、みんなが呼んでるから」
行かなくちゃ、という言葉はクオの口に吸い込まれた。
そのまま、粘度の高い甘すぎるキスをうける。
「嫌だ。行かせない」
体が軋むほど力強く抱きしめられると、心が切ない気持ちでいっぱいになる。
「ここにいて、ミク。どこにも行かないで」
囁くように言われ、体が熱くなる。
クオの背中に腕を回し、精一杯の力を込めた。
「でも、行かなきゃ」
言葉と裏腹に、行きたくない、と腕で叫んだ。
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はくしゅ
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