つめさきにマニキュア Ⅲ
あたしだって、やられるばっかじゃないんだからっ!
ぺたぺたとかくばった爪にオレンジを塗っていく。レンはそれを目を細めて見ている。
その余裕っぷりが気にくわなくて、あたしはマニキュアを塗るスピードを上げた。
「はい終わりっ!」
「うん。ありがと」
レンはオレンジ色の爪を満足そうに眺めている。
「乾くまで動いちゃだめなんだからね!」
「わかってるよ」
レンは苦笑する。それがまたあたしは気にくわない。
「ふんっ」
蓋をしっかりしめ、マニキュアを床に転がした。近づくとレンが手を広げて自分から距離をつめてきた。
そのまま腕の中にとじこまれる。なめられてる。絶対。
「何? どうしたの?」
「この間のお返し」
三日月型の唇にキスをする。
目を閉じたレンにあたしはひきよせられる。
その余裕っぷりが頭にくるのっ!
気づかれないように手を伸ばしながら、おずおずと唇の間から舌を出す。軽く唇を舐めると、蛇のような舌はあっさり食いついてきた。同時に、冷たい金属の感触をあたしは手にする。
つぅかまぁえたぁっ。
素早くレンのベルトを外す。
とたんにレンの体が暴れだす。体を離される前に、体重をかけてレンの体を倒した。そのままレンの腰に馬乗りになる。
「ちょ、リン何すんの!」
レンの口から慌てきった声が出た。爪をかばいながら動く手はちょっとした邪魔にしかならない。
やっと余裕そうな笑いが消え、うれしくて顔がにやけてしまった。
「お返しって言ったでしょ」
ズボンのチャックを下ろし、下着の上からもわかるほど形を変えたそれを撫でる。
「なんだ、もうおっきくなってるじゃん」
布の上からそれを握った。
その手を上下に動かし、湿ってきた先っぽをいじる。
「リン、ほんとやめ、っ」
レンが息を呑む。けれど、それもすぐにいつもの調子に戻り、静止の言葉を口にしだした。
むかつく。
あまり成長を見せないそれに闘争心を燃やす。
レンの声がそれを増幅させる。
まだ。
だんだんとレンの息が上がってきた。
もう少し。
「レン、気持ちい?」
握る手はそのまま、もう片方の手をレンのネクタイに伸ばした。
引き寄せ、首筋に下を這わせる。
あと、もうちょっと。
「っ……リンっ!」
突然体を引き寄せられた。唇が近づいてくる。
ごんっ!
思いっきり頭を振ると、そんな音が部屋に響いた。
予想してなかっただろう。目を丸くさせているレンからすばやく離れ、想像していたより大きかった頭の痛みを我慢しつつ、あたしはべぇっと、舌を出した。
「お仕置きって言ったでしょ! 残念でしたっ!」
あっけにとられているレンを残し、部屋を飛び出ると、後ろから怒りまじりに名前を叫ばれた。走りながら答える。
「レンのばーかっ!」
ばたばた廊下を駆けていく。勝利感に心が躍る。
今頃、蛇の生殺し状態でレンは悔しさに涙をにじませていることだろう。
勝った。
ふと手を見ると、オレンジ色の長細いものを握っていた。掴んだまま引き抜いて持ってきてしまったらしい。
ふふっと笑い、あたしは握りしめたそれにキスをした。
「レンだ~い好きっ」
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はくしゅ
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