お風呂 Ⅱ
胸の上についたキスマークにあたしはこっそりため息をついた。
独占欲強いんだから、もう。
頭からお湯をかぶって体についていた泡を流した。
「終わり?」
先に湯船につかっていたレンの言葉に頷く。
「交代、する?」
そう言って、湯船に入った。
両手でお湯をかき、立ち上がろうとするレンにおもいっきりかける。
「っ! なにすんだよ!」
叫ぶレンに、あたしは笑いかけた。
「こうすると、ほんとにおんなじだね。私たち」
同じ長さの黄色い髪。空色の目。
未発達の細い体。
いつもはちょっと違う髪も、お湯をかぶったらほとんど同じだ。
「今なら、どっちがどっちだか、誰も見分けられないよね」
笑いながらお湯の中を滑り、レンの肩を掴んで引き寄せる。
結果的に引き寄せられたのは、私の体だけど。
「オレは、リンがリンだってわかるよ」
微笑みながら唇を近づけてくるレンに、あたしも笑い返す。
「あたしだって、レンがレンだってわかるよ」
「ん、あ」
獣みたいに息を吐く音が、浴室の壁に反響されて響く。
「は、あ……れっ!」
声を必死に押し殺そうとしても、浴槽の縁についた手が滑りそうで、どうしてもそっちに意識がいってしまう。
体が揺れる度に、後ろからくる快楽で息がつまる。
「れ、ん……レン!」
首を回して名前を呼べば、蜂蜜みたいなキスがふってきた。
「好きだよ、リン。大好きだ。オレだけのリンだ」
甘すぎる言葉にくらくらする。
「レン、もっと。もっと!」
甘い言葉が欲しいのか、
蜂蜜みたいなキスが欲しいのか、
単純に、体が欲しいのか。
壊れるんじゃないかと思うくらい、体を揺すられて、
答えを出す前に、あたしはあたしを手放した。
このまま溶け合ってひとつになれたら、
どんなに幸せだろうと思いながら。
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はくしゅ
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