右と左の浮気事情 Ⅲ
あたしはその部屋に飛び込むと、扉をしめ慌てて鍵をかけた。
立っていられなくてずるずると座りこむ。
目を閉じると、レンの困りきった顔が浮かんだ。
「どーした」
頭上から降ってきた声に顔をあげると、アカイトがばかにしたように笑った。
「レンと話してきちゃいましたーって顔だな。だから話すなっつったのに。余計なこと言ってねえだろな」
「……話してなんか、ない」
うつむくとじんわり涙が滲んだ。
「話なんか、出来なかったもん……」
「あー! 待て待て泣くな!」
がしっと頭を掴まれた。
無理やり上を向かされる。すぐ近くにアカイトの顔があった。
「腹減ってるから涙腺緩いんだ! 昨日の夜からなんも食ってねえんだろ? 今泣いてたらまじでぶっ倒れるぞ!」
そう言ってあたしの手に包みを一つ持たせた。
両手に乗るくらいの包み。
メイコ姉のクラブサンドだった。
『ちゃんと食べなさい』ってメモ付き。
わざわざ作ってくれただろうメイコ姉の優しさに感謝の思いがあふれでた。
あと、持ってきてくれたアカイトにもほんの少しだけ。
「女泣かせのくせに」
「なんか言ったか?」
「……別に?」
お礼を言うのはしゃくだった。
「ほら、さっさと食え!」
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はくしゅ
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