枯れ落ち葉の紅の色 拾
突き上げられるたび声を漏らす。
前回、酔い倒れて終わったせいか、客はいつも以上にこちらを気にせず、自分勝手に動きまくる。
痛いってのよ、この醜男!
叫んでやりたいのをこらえてされるがままになってやる。
あのバカと二人で寝た日がひどく懐かしくて。
消えたはずの痕が熱い。
犬。
今日のバカの第一印象はまさにそれ。
座布団に座ってはいるけど、腰がうきかけてるのは明らかで、
それでも、前回のことを考えてだろう、かけ寄るのは控えているけれど、まったく我慢しきれてない。
「会いた、かっ……た」
こちらの目がまだ見れないらしく、バカは落ち着きなく目を泳がせる。
「私もよ」
バカがぱっと顔を上げてこちらを見た。
目がきらきら輝いている。
「嘘」
そう言ってやった直後の、悲しそうな顔と言ったら。
久しぶりに、心から笑った。
情けない姿に和みすぎたのか、のんびりした雰囲気にのまれたのか、
酌をしてるうちに気づけば、バカの肩に頭を乗せていた。
バカが驚いてうろたえてるのが伝わってくる。
「どう、し、た?」
「……疲れたわ」
言うほど体が重いわけでもないが。でも原因は確実に、
「あんたのせいよ」
う、と息を詰まらせるのが聞こえた。
「すまない」
まったくだわ。と、言おうとしたところで、持っていた徳利を取り上げられた。
「疲れているなら、休んだほうがいい」
優しいというか、ばかというか。
「私を抱きに来たのにいいの?」
「……会えただけで十分だ」
「嘘おっしゃい。本当は……って体が言ってるわよ」
体を起こしてにっこり笑ってやれば、バカの顔はすぐ赤くなった。
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