枯れ落ち葉の紅の色 捌
まあちょっとは、こうなるんじゃないかと思ってたけど。
まさかここまでとは、思ってなかったわよ。
畳に打ち付けた尻が痛い。
回された腕が体に食いこむ。
「……行かないでくれ」
泣きそうな声。
それより首しまってる!
開けたままの襖の前に、あたしはしりもちをついた格好で拘束されていた。
花魁が、男にすがりつかれるなんて、よくあるコトだけど。
かっこわるいったらありゃしない。
まったく。
ため息が出た。
「放してちょうだい」
静かに言うと、ゆっっっくり時間をかけて拘束がとけた。
手を振りはらって体を離し、立ち上がろうとしたところで、
着物が後ろにつっぱって転びそうになった。
……こんのくそ男。
こいつは何度このあたしを転ばせたら気がすむのかしら。
首を回してみれば思った通り、あたしの着物が掴まれていた。
うなだれながら着物を握りしめる姿は、まるで説教されてる子供。
バカな男。
遊女なんかに惚れるなんて。
「次はないわよ」
バカが顔をあげた。
見るから嬉しそうな顔をして。
自分が殴られて罵られたこと、わかってんの?
ああ、もう。
ホントにバカ。
「放して。これじゃ移動できないし、ちゃんと座れないでしょ」
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