足りなくて
真っ暗な部屋に響くレンの寝息。
それが規則正しく続いていることを確認して、あたしは体を起こした。
自分の布団を抜け出し、ゆっくりレンのベッドに近づいていく。
ベッド脇に立っても、レンの寝息は規則正しいままだ。
「レン」
呟くだけで、胸が苦しくなる。
ベッドに手をつくと、スプリングが軋んだ。
ぴくりとも動かないレンをじっと見つめる。
髪も、目も、鼻も、口も、
そっくりな私たち。
なのになんで、ほんのちょっとの違いにこんなに切なくなってしまうんだろう。
「レン」
私が何度好きだと言っても、レンは笑顔で答える。
「オレもリンが好きだよ」
そうじゃないのに。
ほんとに、ほんとにあたしはレンが好きなのに。
手を握ってもらうだけじゃ足りない。
頭を撫でてもらうだけじゃ足りない。
全然、足りないよ。
視界がにじむ。
好きだなんて、何度言っても言い足りなくて。
気づいてもらえないことが悲しくて。
「愛してる」
あたしは寝ているレンの唇にキスをした。
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はくしゅ
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