デリートドリーム
君が、笑ってた。
「じゃあね」
待って。
「ばいばい」
行かないで!
はっと気がつけば、自分の部屋のベッドの上で。
暗闇の中、体を起こせば目尻から頬に滴がこぼれた。
汗で張り付いた寝間着が気持ち悪い。
でも、それらに意識が向ききる前に、あたしはベッドからはい出した。
逃げるように部屋を出て、すぐ隣の部屋の扉を開ける。
のぞき込めば、全く同じレイアウトの部屋は真っ暗だった。
おそるおそるベッドに近づいて中をのぞき込めば、特に変わった様子もなく双子の彼が眠っている。
ほっと一息つくと共に、涙がこぼれそうになって、あたしはあわててそれをぬぐった。
もう一度自分の部屋に行くのは嫌で、レンのベッドの端に滑り込めば、薄く開いた眠そうな目がこちらを見た。
「また?」
布団の下で腕が広げられ、あたしはその中に飛び込んだ。
「このごろ、多い、ね」
手探りで目尻をぬぐわれ、抱きしめられる。
「オレ、ここにいるよ?」
わかってる。
わかってるのに、
あんな夢を見ただけで、どうしようもない不安に駆られてしまう。
レンの存在を確かめずにはいられなくなってしまう。
そんなこと起こらないって、
信じてるのに、
信じているからこそ、
あなたが消えるのが怖い。
すでに眠りの世界へ戻ったレンの手を、あたしは握り締めた。
絶対に、離れないように。
レンに分けてもらった体温で、今日もあたしは眠りにつく。
ぽちっとおしていただけたら光栄です
はくしゅ
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