キミとファーストキスを
「ちゅーしてっ」
語尾に音符マークのついた突拍子もないその言葉に、彼は固まった。
「はあ?」
「ちゅーしてレン!」
間近にある彼女の瞳はきらきらと輝いていて、彼はため息を一つついた。
「なにバカなこと言ってんの」
まとわりついてくる彼女の手を引き剥がし、彼はあくまで冷ややかな目で彼女を見つめる。
「寝ぼけてるなら、さっさと目覚ましたら」
「寝ぼけてなんかないもん! レンとキスがしたいだけだもん!」
「なんでそんなことしなきゃいけないのさ」
オレたちただの双子だろ、と吐き捨てるように言う彼の前で、彼女は肩を落とす。
「……ファーストキスは、レンとがいいなって、思っただけなのに」
がん、と、頭を打たれたようだった。
うつむいている彼女を彼は見つめる。
なんだよ。
お前、オレのこと男だって理解してねぇんじゃなかったのかよ。
オレのこと、弟としか見てないんじゃなかったのかよ。
なんだよ、今さらファーストキスとか気にしやがって。
オレが、今まで何回挑戦したと思ってるんだよ。
全部気づかなかったくせに、なんで諦めたころにまた。
目の前の彼女はまだしょぼんとしていて。
その姿に彼の胸は高鳴る。
オレのこと弟としてしか見てないくせに。
男としてなんて見てないくせに。
彼の手が彼女の細い肩を、
「もういいもん!」
掴めなかった。
突然顔を上げてきっとにらみあげる彼女に、彼は顔を真っ赤にしながら慌て伸ばした手をひっこめる。
「レンがしてくれないなら、カイトにしてもらうもんっ!」
赤かい彼の顔が固まる。
「は?」
「レンのばーかっ」
彼女がそう叫びながら走りさる。
カイト?
なんでそこにバカイトがでてくんだよ。
カイトにしてもらう?
なにを。
キスを?
赤の顔に青が加わる。
「待てリン!」
猛ダッシュで彼女の後を追う。
「それだけはぜってぇ許さねぇ!」
ぽちっとおしていただけたら光栄です
はくしゅ
PR