新婚生活四ヶ月目
「ただ」
「おっかえりーっ」
最後まで言う前に、エプロン姿の彼女のタックルを食らった。
「お仕事お疲れ様。ご飯にする? お風呂にする? それともあ」
「ビールで」
かわいくポーズを決めたまま固まるリンの横を素通りすると、後ろからきーっ! と奇声が上がった。
「最後まで言わせなさいよーっ!」
背後から突撃された。精一杯の力で抱きしめられる。
「レンのばかぁ」
「はいはい。重いよリン」
軽くあしらうその態度が気にくわなかったようで、再び奇声があがった。
俺はため息を一つつき、首を回して引っ付いている彼女を見る。
「お腹空いたよ。今日のご飯なに?」
「……ロールキャベツ」
「早く食べよ。今日も食べないで待っててくれたんでしょ?」
頷く彼女の手を体からはずして歩き出す。
「あー! もうっ!」
再び背後からの強襲をうけた。
扉を開けようとしていた俺はふんばりきれずに扉に顔を強かにうちつける。
「私はこんなにレンが好きなのに一方通行っぽいのがむかつく!
レンが私の気持ちお見通しなのはもっとむかつくー!」
ぼかぼかと背中を叩かれる。
痛い痛い。
「……そんなリンさんにプレゼント」
俺は鞄に隠していた紙袋を取り出した。
食後に出すつもりだったのにな、まったく。
計画にズレが生じたことに肩を落としていると、背後から息を呑む音が聞こえた。
どうやら気づいたらしい。
「これっ! この間テレビでやってたプリン!?」
「食べたいって言ってたでしょ」
「うんっ! レンありがとうっ!」
プリンの入った紙袋を掲げるリンはご機嫌だ。
「着替えてくから、ご飯の用意しといてくれると嬉しいです」
「まっかせといてっ!」
プリンを持ってリンが台所にかけて行く。
うきうきとした後ろ姿を見て俺は思わず呟いた。
「かわいいなあ、もう」
新婚生活四ヶ月目。
今日も俺は、キミにめろめろです。
ぽちっとおしていただけたら光栄です
はくしゅ
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